安全への取組み~安全スローガン~
安全スローガン
平成31年1月度安全スローガン
2019-01-12
平成31年1月度安全スローガン
『ヒューマンエラーをなくして安全な現場作業』
建設業に限らず、どんな業界でも起こりうるヒューマンエラー。
労働災害の9割以上の原因がヒューマンエラーにあるといわれています。
ヒューマンエラーとは何なのか?なぜ起きるのか?
工事で予定表がパンパンになるこの時期。
今回はヒューマンエラーについて掘り下げてみました。
【ヒューマンエラーの分類】
ヒューマンエラーといっても、その発生原因は様々で、大きく12に分類されます。
①危険軽視・慣れ ②近道・省略行動 ③場面行動本能 ④疲労 ⑤不注意
⑥高齢者の心身機能低下 ⑦パニック ⑧単調作業による意識低下
⑨無知・未経験・不慣れ ⑩錯覚 ⑪連絡不足 ⑫集団欠陥
①危険軽視・慣れ
不安全行動の代表的なもので、作業に慣れ始めた新人、または作業歴何十年
というベテランも起こしやすくなります。慣れるにつれ「このくらいは大丈夫」
と危険を軽視し始めます。
また、工期が短い、生産性のみを重視、といった背景から起こり得ます。
現場の安全衛生責任者や職長がこまめに確認し、ルールに則った作業を指導する
必要があります。
②近道・省略行動
「こうした方が早いだろう」と、正規の手順を踏まずに作業し、労働災害に
つながるケースです。
時短はいいのですが、“手抜き”“やるべき手順”を飛ばし、事故に繋がっては
元も子もありません。
「なぜこの手順が必要なのか?」は理解しているはずですが、①と同様、経験
のあるベテランほど油断が生じます。
③場面行動本能
「場面行動本能」とは、注意が一点に集中することで周りが見えず、
本能的に行動してしまうことです。
例えば「安全帯をつけずに高所作業中、工具を落とし咄嗟にそれを拾おう
として落下した」などが挙げられます。
④疲労
疲労が蓄積すると、様々な能力が低下してしまいます。
頭が働かない、体が動かないことで事故に繋がるのです。
疲労は避けられないこと、それを踏まえ適度に休憩したり、長時間労働の緩和が
必要です。
特に熱中症の危険のある夏場では、身体は想像以上に疲弊しています。
体調管理は個々の責任でもありますが、職長は必ず朝礼時に各作業員の体調
チェックと怪我などの有無を確認しましょう。
⑤不注意
ヒューマンエラーの代表的なものが「不注意」です。
単純に注意散漫になることも、より多いのが作業に集中している時です。
目前の作業に集中すればするほど、周囲が見えなくなっています。
周囲に声を掛け合うなど、仲間に気を配るようにしましょう。
⑥高齢者の心身機能低下
建設業界では、労働者の3人に1人が55歳以上です。
建設業の高年齢労働者の労働災害の中でも、特に割合が高いのは死亡災害です。
原因の一つに、高年齢者が自身の身体機能低下の自覚が困難であることが
挙げられます。
全体的な筋力低下、平衡感覚、視力や記憶力、疲労回復力なども低下します。
対策としては、心身機能低下を自覚するため「体力測定の実施」、高年齢者に
配慮した職場環境の改善が考えられます。
経験ある高年齢者が培ってきた技術や知識は得難いもの。
彼らがより能力を発揮できるような環境作りは、会社の力になるでしょう。
⑦パニック
想定外の事が起こった際、正常な判断ができなくなることを言います。
例として「咄嗟にブレーキとアクセルを間違えて踏み込んだ」などがあります。
対策としては、想定外の事が起きてもパニックにならないようメンタルを
強化する、また起こりやすい災害に対して、あらかじめ手順や注意喚起を
明示することが必要です。
⑧単調作業による意識低下
同じ作業を繰り返していると周囲への意識が低下し、⑤不注意にも通じますが、
何かが起きた時に瞬時の判断が難しくなります。
「不注意」「パニック」「単調作業による意識低下」など、人間の本能や
意識の問題によるヒューマンエラーは、人の注意力に依存しない安全環境を
整える必要があります。
⑨無知・未経験不慣れ
新人に最も多いヒューマンエラーで、作業に関して知識・経験不足で起こります。
「見て覚える」も大事ですが、しっかりと新人教育をする必要があります。
十分コミュニケーションをとり、質問や反復練習することで技術を習得できる
ような環境を整えることが重要です。
⑩錯覚
「錯覚」は認知ミス、誤認識であり、「見間違い」「聞き違い」「思い込み」
「勘違い」も含まれます。
職長の安全指示の伝え方と、受け取る側の工夫によって「錯覚」は大きく
減らせるようになります。相互に確認を取り合いましょう。
⑪連絡不足
「連絡不足」は複数におけるコミュニケーションエラーになります。
大きな現場になるほど関係業者が増え、全作業員に正しい指示が伝わらない
ことで労働災害が起こりやすくなります。
朝礼やメールなど相互に再確認し、安全指示がしっかり伝わるように徹底
しましょう。
⑫集団欠陥
「集団欠陥」とは、いわゆる現場の雰囲気です。
工期が迫っているなど、本来“安全第一”のはずが、“工期第一”になり、
不安全行動が起こりやすくなります。
「集団欠陥」は建設業界全体の根深い問題であり、業界全体で取り組まなくては
なりません。
【ヒューマンエラーへの対策方法】
人間はミスを起こす、という前提で
「なぜ人間は不安全行動を起こしてしまうのか」を12分類したものが
先述の項目です。このようなヒューマンエラーを原因とする労働災害を
減らすにはどうしたらよいでしょうか。
完全にミスをなくすのは難しいですが、次のような対策をすることで、
減らすことは可能です。
〇エラーの発生可能性を低くする
〇エラーを防御するリスク対策
【エラーの発生可能性を低くする】
フールプルーフ、フェイルセーフという概念は、ヒューマンエラーによる
災害を防止するために重要なポイントになります。
◎フールプルーフ
そもそもエラーを起こなせないようにすること
誰が使ってもミスが起きないような設計にすること
例]・洗濯機のフタが閉まっていないと回転しない
・車はブレーキを踏んでいないとエンジンがかからない
・電子レンジの扉が閉じていないと動かない
◎フェイルセーフ
誤操作、故障した場合でも安全になるよう設計すること
エラーが起きても事故に繋がらないようにすること
例]・電気ストーブが転倒時に通電が切れる
・列車のデッドマン装置
(運転士の意識喪失など異常事態時に自動的に列車を停止)
【エラーを防御するリスク対策】
フールプルーフ、フェイルセーフは機械装置の安全対策ですが、では個々の
人間ができることは何でしょう。
◎スキル・知識の習得
◎安全意識を高める
◎リスクの所在を知る
つまり、これまで散々言われてきた、基本の手法です。
朝礼での安全指示、ヒヤリハット報告・共有は、リスクの所在を知る上で
非常に有効です。
「指差し呼称」も意識を高め、徹底することで不安全行動の減少に役立ちます。
また“人はミスを起こしてしまう”という前提にたって、もし災害が起きた場合は
その作業のPDCAサイクル(Plan計画・Do実行・Check評価・Action行動)
を見直す必要があります。
その災害から学び、対策を練ることが必須です。
いかがでしょうか。
ヒューマンエラーの原因12項目、誰しも経験がありそうな項目ですね。
『ヒューマンエラーをなくそう!』とはよく言いますが、実際にこの原因を
全従業員、完璧になくすことは正直難しいかと思います。
“ミスありき” であらかじめ環境整備、心構え、準備をし、何か起きた
時に被害を最小限に抑えるのが最も有効で効率的なヒューマンエラー対策
なのかもしれません。